寝袋を選ぶ時に知っておきたいダウン量で性能を見るための知識!

道具

こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!

みなさんは寝袋を選ぶ時の温度は何を基準にしてますか?

袋に書いてあるマイナス20℃対応という文字ですか?ヨーロピアンノームですか?

ダウンシュラフならばダウン量である程度の保温力を知ることができます。

今回はダウンシュラフのダウン(羽毛)量で保温力を見る方法を説明していきます。

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三大寝袋メーカーの寝袋表記

一番わかりやすい国内寝袋メーカー三社のNANGA、ISUKA、mont-bellのダウンシュラフをスペックを見ながらダウン量も見ていきます。

NANGA

ナンガはUDD、オーロラ、オーロラライトという3つの主要なダウンシュラフです。

UDDは撥水ダウン、オーロラは防水生地、オーロラライトは軽量な防水生地という分け方がされています。

製品名としては「UDD BAG 180DX」や「AURORA Light 450」のように表記されます。前半の英語はどのタイプの寝袋なのかという種類分けです。

最後に書いてある数字が実はダウン量の表記です。

UDD BAG 180DXなら180gのダウンを使用

AURORA Light 450なら450gのダウンを使用

という意味になります。

ISUKA

ISUKAはAIR(エア)シリーズがメインです。

エアの中には「エア280X」と「エア300SL」と最後の英語の表記の違いで2種類の寝袋があります。

Xのモデルは800FPのダウン、SLは720FPのダウンを使用しているという意味です。

ISUKAも中間の数字が封入されているダウンの量。

エア280Xなら280gのダウンを使用

エア300SLなら300gのダウンを使用

モンベル

モンベルの寝袋はダウンハガーという名前のモデルで、ダウンハガー900、ダウンハガー800、ダウンハガー650などのモデルがあります。

この900や800という表記はダウン量ではなく、FP(フィルパワー)のことです。間違えやすいので注意。

さらにFPごとのモデルで、「ダウンハガー800 #3」や「ダウンハガー900 #1」という製品名になります。

モンベルの場合はこの#3などがダウンの量の分け方になっていて、#7~0まであり、低くなるほど暖かくなるという表記です。

メーカーがダウン量を表記していませんが、アメリカ版サイトのモンベルUSAだとダウン量が記載されています。国内品と誤差あるかもですがそちら参照しています。

モンベルUSA/スリーピングバッグ

ダウンハガー800#5で170g程度のダウン量

ダウンハガー800#3で280g程度のダウン量

ダウンハガー800#1で570g程度のダウン量

2021年からダウンハガー900、ダウンハガー800シリーズが全てシームレスモデルに変わり、ダウン量はおそらく変化しているのではと思われます。詳細は不明。

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大体の目安

それぞれのメーカーの寝袋のダウン量がわかったので、そこから時期や温度に対応するダウン量を見ていきます。

各社表記

NANGAとモンベルはヨーロピアンノーム基準。イスカは独自基準ですがヨーロピアンノームリミット相当。

NANGAはコンフォートからリミットで、イスカはリミット、モンベルはコンフォートで記載しています。

夏用寝袋のダウン量

ナンガ
UDD BAG
180DX
イスカ
エア 180X
モンベル
ダウンハガー
800#5
対応温度 7~11度 8度 8度
FP 770FP 800FP 800FP
ダウン量 180g 180g 180g
重量 450g 430g 450g

6~9月ごろの気温10度以上の比較的暖かい時期用の寝袋。

平地のキャンプなら3シーズン使え、標高の高い山では真夏用というモデルです。

ナンガはFP低くダウンに加工してるため少し重く、イスカとモンベルはダウン量が重量差になっていると思われます。

ここからわかるのは夏用寝袋はマミー型でダウン800FP前後、ダウン量200g前後、寝袋重量450g前後のものということです。

さらに細かく言うと生地も10~20デニールほどのものということでしょう。

 

タケモのスリーピングバッグ2は750FP、ダウン量200g、寝袋重量500g、20デニールで使用温度8度と完全にこのグレードです。イスカライクなデザインでダウンの質を下げた分他よりもお買い得。

 

中国メーカーながら高い質のダウンシュラフを作るAEGISMAX。そのフードなしモデルMINI。

Mサイズで800FP、ダウン量230g、重量440g、20デニールで対応温度11~6度です。

フードないため総ダウン量は減り、頭が寒くなります。しかし体部分のダウン量は多く軽量で保温力は一段上。

フードなしでダウン230g、フード有り230gでは体の保温力は異なるのです。

3シーズン寝袋のダウン量

イスカの寝袋AIR280Xショート

北海道の平地で5~10月くらい、山ならもう少し狭くなります。

最も使い勝手のいいモデルで保温着と併用することで0度まで対応できるモデル。慣れればマイナス気温でもいけますが、あまりオススメはできません。快適に寝るなら5度くらいを目安にしたいとこ。

キャンプ、テント泊登山共に寝袋を1つ持つならこのグレード。真夏ならジッパーをあけて涼しく、春秋の寒い日は厚着やシュラフカバー、湯たんぽで対応温度をあげやすいです。

ぼくはイスカエア280Xショートを長く使用してます。

ナンガ
UDD BAG
280DX
イスカ
エア 280X
モンベル
ダウンハガー
800#3
対応温度 4~8度 2度 3度
FP 770FP 800FP 800FP
ダウン量 280g 280g 280g
重量 550g 570g 600g

 

ナンガの対応温度は少し控えめなのかなと思ってしまいますね。

ナンガは変わらずシングルキルト構造なのに対して、イスカは一部ボックス構造を採用して生地が増え重量が重め。

幅広く使える3シーズン寝袋は、マミー型でダウン800FP前後、ダウン量300g前後、重量600g前後のものとなります。

 

AEGISMAXのフラグシップグレードG1

800FPダウンを380g封入、15D、重量722g、コンフォート3度、リミット‐2度。

ダウン量は多めで重めですが保温力は同グレード。それだけ国産メーカーの寝袋の質が高いということでしょうか。

半額近い価格で買えるAEGISMAXはやはり手の出しやすさが魅力。

冬用寝袋のダウン量

冬用ダウンシュラフのジッパーを開いた中

冬用の寝袋。冬といっても0度~マイナス20度なんてこともあり幅が広いですが、ここで紹介するのはマイナス10度程度が目安。

ただ冬は厚着で寝ることが多く、慣れていればマイナス15度やマイナス20度でも寝れます。

冬キャンプ用シュラフにオススメです、厳冬期登山で2000~3000m級、北海道の山で寝袋を軽量化するならこのグレード。

ぼくは中で防寒することで、モンベルアルパインダウンハガー#1でマイナス24度でも寝れてます。

ナンガ
UDD BAG
630DX
イスカ
エア 630X
モンベル
ダウンハガー
800#1
対応温度 -5~ -10度 -15度 -5度
FP 770FP 800FP 800FP
ダウン量 630g 630g 570g
重量 1045g 1020g 984g

 

冬用の寝袋は命の危険すらある環境で使うものなので、各社とも冷気の侵入を防ぐため構造での工夫が増えてきます。

首元肩元にマフラーのようにダウンを封入したショルダーウォーマー、ジッパーからの冷気を防ぐドラフトチューブ、生地縫い目からの熱損失を防ぐ台形ボックス構造など独自の工夫がされています。

そのため封入されたダウンがどこに使われているかで体感温度はかなり変わります

そのため同じダウン量の寝袋でも温度がずれてきています。

イスカの対応温度が頭一つ抜けて高い表記で-15度。モンベル#1はコンフォートが-5度ですが、リミットは-12度なのでそこまでの差はありません。ダウン量はイスカが少し多くその差でしょう。

ナンガは撥水ダウンを使っていますがFPが低い分、構造の似たイスカより温度が低いイメージ。

マイナス10度程度の冬用寝袋は、マミー型でダウン800FP前後、ダウン量600g前後、重量1000g(1kg)前後のものということです。

ただ有名な国産メーカーが作ってこのスペックです。中国製や安い寝袋の場合はこの基準以下を想定し余裕を持っておきたいです。

 

タケモのスリーピングバッグ7

750FP、ダウン700g、重量1150gで最低使用温度マイナス15度。

他メーカーに比べ安くそれでいて必要十分なスペックです。

FPを下げた廉価ISUKAですが悪い意味ではなく、コスパ重視で良い意味の廉価。リーズナブルと言えます。国産メーカーなので安心感も強いです。

 

AEGISMAXのG3

Mサイズで800FP、ダウン952g、重量1294g、15デニール、コンフォート-8度、リミット‐15度。

少し重めで保温力は高め、AEGISMAXすべてですが獣臭がする場合が多いので洗濯か風通しのいい室内に放置すると抜けてくるようです。

三大メーカーに比べ半額程度で買える圧倒的なコスパは魅力

厳冬期(真冬)用寝袋のダウン量

本州でも高原や積雪地域での冬キャンプでぬくぬくするならこの保温帯。

冬キャンプで寒いのが嫌なら難しいこと考えずに冬用を買うならNANGA900位買っちゃえば幸せになれます。

逆に軽量性重視な登山で使う人は少ないレベルの寝袋。

用途的には厳冬期北アルプスや八ヶ岳、北海道大雪山十勝岳日高山脈、海外遠征登山や極地遠征を視野に入れれる保温力の寝袋です。

 

雪の中で寝袋で寝ている姿

ナンガのオーロラライト900DXイスカのダウンプラスデナリ900モンベルのダウンハガー800EXP、Naturehike ULG1000、AEGISMAX G4~5などが厳冬期用の寝袋。

700~800FPのダウンが900g~1000gほど封入されたモデルです。

寝袋の重量は1500g前後とテントレベルの重量になり、収納サイズはテント以上です。

かなりの寒がりな方、冬キャンプで絶対に寒さを感じたくない人なら選択肢に入れるのもありでしょう。

得られるものは絶対の安心感です。

極地用

厳冬期用よりもさらに保温力が高い極地用もあります。

ダウン量では1000g以上です。極寒でも薄着で寝ることができるでしょうし、寒いかもしれないという不安とは無縁になれます。

圧倒的なダウンのロフトがすごいAEGISMAXのULTRAのレビュー記事もどうぞ!

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気を付けること

ダウン量である程度寝袋のスペックはわかるようになったかなと思います。

しかし800FP〇グラムだから大丈夫だな、と安易に決めないでほしいのも事実。

気を付けてほしいポイントもいくつか書いていきます。

目安程度であること

イスカ 寝袋AIR280Xショート

大体このくらいの暖かさの寝袋なんだろうなー、程度に見るようにしましょう。

ヨーロピアンノームと書かれているから安心もできませんし、自分の寒さ耐性、体調、天気でも寝袋の寒さの感じ方は変わります。

スペックで書いてる対応温度では寝れない

モンベルアルパインダウンハガー800#1の対応温度

ネットで良くある「冬用寝袋!マイナス15度対応!」とか、「ヨーロピアンノームコンフォート‐10度!」。という表記は大体参考になりません。

有名メーカーですら信用できない数字なのに中国メーカーや格安寝袋は目安にもなりません。

レビューや製品重量など安易な言葉に騙されずしっかりと寝袋を選べる知識と目を養えましょう。

生地や裁縫でも変わる保温力

モンベルダウンハガー800ハーフレングス#3の足元ジッパー

シングルキルト構造ではどんなにダウンを積めても冬は寒いです。縫い目から冷気が入りにくいボックス構造や、さらに工夫された台形型ボックス構造なら効率的に保温力を維持できます。

首元肩元を温めるショルダーウォーマーも冬用なら必要な機能ですし、ジッパー部分も冷気が入りやすいためそれを防ぐドラフトチューブも欲しい性能です。

また冷えやすい足元部分のダウン量を増やしているメーカーは信頼性があがります。

そして重量は増えますがデニールも太いほうが防風性があがり暖かくなるでしょう。

寝袋はただダウンを詰めただけの袋ではないのです。

ダウンの表記はあいまい

NANGAの横田智之社長にトレイルズがインタビューした記事の引用です。

羽毛の良し悪しの基準のひとつとして、フィルパワー(FP)という単位がある。これは羽毛30g当たりのふくらみ度合いを示したもの。FPの数値が高ければ高いほど大きくふくらむため、良質な羽毛と言えるのだ。

たしかに、アウトドアショップで寝袋やダウンジャケットを購入する際、多くの店員さんがFPの数値を用いて説明する。それも踏まえると、メーカーサイドとしては、いかにFPの高い羽毛を適正な価格で提供できるかがキーになってきそうだ。

しかし、智之氏は実情をこう明かす。

「じつは、羽毛っていうのは、いくらでも “ごまかし” がきくんですよ。FP自体、統一の基準はないですし。検査方法にしても、私が知っているだけで5つくらいある。どの検査をするかで数字は変わるんです。しかも羽毛の世界は特殊で、品質表示において5%の誤差が認められている。どういうことかと言いますと、まず前提として、世の中に羽毛(胸毛)100%というものは存在せず必ずフェザー(羽根)が混じります。表示例としてはダウン90%、フェザー10%という感じです。でも5%の誤差が認められているので、ダウン95%、フェザー5%と表記してもいい。実際はダウン85%、フェザー15%のものも、ダウン90%、フェザー10%としても何ら問題はないわけです」

驚きの事実である。ある意味、カミングアウトと言ってもいい。ごまかすというと聞こえが悪いが、実際はどのメーカーもごまかしているわけではない。基準に従って検査および表示しているだけであって、何ら後ろめたい点はないのだ。ただ、その数値が絶対ではないということ。要は、FPの数値だけでは良し悪しの判断や比較検討ができないわけだ。

「またFPとは関係なく、羽毛自体の品質も仕入れ先で変わるんです。ダウン90%、フェザー10%であっても、キロ5000円くらい価格が違ったりする。しかも高いからいいわけでもない。その見極めが重要なんです。ウチの場合、そこには自信があるんです。羽毛を毎日触っている現場の社員からすれば一発ですよ。すでに仕入れ先は固定していて同じ羽毛を仕入れていますが、週によって品質のばらつきがあって。現場の社員はそれを絶対に見逃しません。『社長、これ質が悪いで!』って必ず言ってくるんです。で、すぐ返品して違うものを仕入れる。昔よく『ナンガさんのはFPがよそのとこより低いけど、暖かいよね』と言われたんですけど、ただただ正直にやってるだけなんですよね」

FPやダウンとフェザーの混合率だけでは分からない部分、つまりはこの見えない部分へのこだわりこそが、ナンガ商品の品質を決定づけているファクターなのだ。

出典:TRAIL CULTURAL WEBMAGAZINE TRAILS(トレイルズ) : #001 NANGA / ナンガ – 国内生産だけは、絶対にやめない。

かなり衝撃的な内容。FPは参考程度にしかならないという話です

800FPだから750FPより暖かいとは限らないし、逆もそうということです。

こうなるととりわけ中国メーカーの商品の信頼度が下がってしまいます。

ただ安いというメリットは消えないです。

そしてネットの情報でしか比較できないぼくらはレビューや動画でひたすら比較することしかできないんですね。

寝袋の国産メーカーが値段こそ高いですが、圧倒的に暖かく、信頼感がある理由がわかってきた気がします。

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まとめ

スペックに書いてある寝袋の対応温度に惑わされるキャンパーは卒業しましょう!

自分でここがこうだから、この温度でいけるだろう。そう考え、実際に購入し、使うことで経験と知識がより深いものになっていきますよ!

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