【-30度以下対応】極地遠征・厳冬期・高所登山で使われる寝袋を紹介!

極地遠征・厳冬期・高所登山 寝袋サムネイル 道具

こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!

寝袋記事の多いこのブログ、薄々気付いてしまうんですよね、あぁぼくは寝袋が好きなんだなあと。

ふとした瞬間に落ちてることに気付くこれが・・・いや、ってやつなんでしょう。

冬用のダウンがいっぱい入ってモコモコな寝袋は入っても楽しいし触ってるだけで幸せになれます。

つまり、極地用なんて書かれた寝袋は存在がヨダレモノなわけです。それを集めてみました。

今回は-30℃以下に対応する世界の寝袋を調べてニヤニヤしながら紹介するだけの内容です。

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選定条件

「-30℃以下に対応している寝袋」

そんな極地遠征用、高所登山、エクスペディション、8000m級、北極圏、凍てつくシベリアといった非日常を越えて、非現実感しかないワードが当たり前に飛び交う紹介文で売られる寝袋をピックアップしました。

基本的に日本国内で使う人が希少種なレベルの保温力と言えるレベルです。

北海道の年中キャンパーで、冬山で泊まるぼくでも-30℃で寝る経験はないワケで、もし買っても年数回も使わない程度な代物です。もちろん、寒がりな人が安心してTシャツ短パンで冬キャンプをするなら有ではあるのでしょう。

登山思考で言えば寝袋なんて削りやすいものを無駄に重くする意味もありません。そういう意味ではラグジュアリーなキャンパーにこそ刺さりやすい内容かもしれません。

それほどに一般人には縁の無い、国内で使うことを考えればコスパなんて言葉とも無縁で、ダウン=軽いの常識すら通じない“極地で寝るための寝袋”なのです。

ただそれでも各社が全力の手抜き無しで作ってるグレードなだけあり、通常の寝袋とは異なる性能、異次元なスペックがあるロマンにあふれた寝袋たちなのも事実。使う気は無くても胸はおどります。

 

国内で手に入るモノに絞ろうかと思ったのですが、世界一暖かい寝袋のフェザードフレンズを外すわけにはいかなかったため、国内外ごちゃまぜにしました。それでも日本で手に入るモノ多め。

寝袋の温度表記にはEN13537(ヨーロピアンノーム)が使われることが多いですが、華氏0℉(摂氏-18℃)以下では正確に測ることができないと言われていて、この保温帯では目安に過ぎません。

そのためEN13537を採用していない寝袋も多くなっていますが、イコール信頼性が低いとはなりません。

ではさっそく保温力の低い順に見ていきましょう。(同じ保温力での並びはアルファベット順)

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一覧表

極地用の寝袋一覧

約1.7MBの大きな画像で見る

一覧で見るとこれだけ。

順番に説明しながら見ていきます。

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【-30℃】AEGISMAX/G5

画像出典:AEGISMAX

金額 約35,000円
対応温度 コンフォート:-23℃
リミット:-30℃
エクストリーム:-53℃
製品重量 1768g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1426g

高品質+安価=コスパ最強な中国のダウンシュラフブランド「AEGISMAX(イージスマックス)」

シンプルなマミー型のフラグシップモデル Gシリーズ(G1~5)の中で一番暖かいG5です。

800FPダウンを1400g以上充填と多めながら、保温力が低めなのはバッフルパターンなどの生地的要因よりも、ダウンの質や洗浄力に問題があるのかなと思っています。

イージスマックスの寝袋は獣臭がある程度報告されてるのもそれ由来でしょう。

それでも補って余りあるダウン量と値段の安さ、EN13537(ヨーロピアンノーム)に対応していることやRDS認証していることもあり、ネイチャーハイクよりも信頼性は一段上で、格安ダウン寝袋の頂点に君臨している存在です。

バックパックキャンプやテント泊登山といった荷物をすべて背負って泊まるアクティビティにおいて、軽さと安さを両立しているのはエントリー層には嬉しい存在。

新製品こそ少ないですが、完成されたラインナップで年々知名度が上がりつつあり、期待値の高い中華ブランドのひとつです。

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【-30℃】ISUKA/ダウンプラス デナリ 1100

画像出典:ISUKA

金額 46,200円
対応温度 -30℃
製品重量 1830g
ダウンFP 720FP
ダウン量 1100g

国内寝袋メーカーの中でも保温力に定評のある老舗「ISUKA(イスカ)」

ダウンプラスシリーズは軽量性ではなく、ダウンのグレードを落とし低価格に仕上げ、幅広い用途に適応したモデルです。

内側にはマイクロファイバー(フリース系素材)を使い、肌触りを良くし、快適性と保温力を重視しています。

イスカ得意の3D立体構造で頭から足先までしっかり保温していて、ただのボックスキルトではない、台形型のボックスキルトを採用しているのも保温力アップの秘訣。

登山はもちろん、金額・機能的にキャンプなどライトな用途でも選びやすいモデル

極地用の中でも、キャンパーが選ぶこともあり、一般に最も使われることのあるであろう寝袋がデナリです。

【-30℃】Naturehike/ARCTIC -23

画像出典:Naturehike

金額 約30,000円
対応温度 コンフォート:-23℃
リミット:-30℃
エクストリーム:-43℃
製品重量 2050g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1300g

言わずも知れた中国アウトドアブランドの雄「NatureHike(ネイチャーハイク)」

一番有名なのはテントですが、椅子、コット、マット、ザック、寝袋とあらゆるギアを出しているアウトドアギア総合ブランドです。

そのネイチャーハイクの保温力重視な極地用モデルで、北極を意味するARCTIC(アークティック)

フロントジッパーにフラップが付き、ドラフトチューブももっこもこ、ネックバッフルは二重という徹底っぷり。

足元も立体的で保温力が高そう。

“中国ブランドの寝袋”と言えばネイチャーハイクよりもイージスマックスが有力な印象ですが、こと厳冬期用で言えば工夫が凝らしてあるネイチャーハイクが魅力的に見えてしまいます。

ただ保温力表記がネイチャーハイクはがばがばで信頼性が低いのは欠点。

【-30℃】Takemo/スリーピングバッグ11

画像出典:Takemo

金額 47,300円
対応温度 -30℃
製品重量 1650g
ダウンFP 750FP
ダウン量 1100g

イスカの系統をたどりコスパに優れる寝袋ブランド「Takemo(タケモ)」の最上位モデル。名前から連想できる通りダウンは1100g充填。

750FPダウン、海外工場、ネット販売限定、広告費の削減、ラインナップを限定的にすることで高品質ながらも比較的安価に仕上げています。

そのせいか知名度は低く、一部の登山者が知っていても使用者は一握り。

そういえば、知り合いでタケモ使ってる人いないなあというレベル。

3シーズン用は春ごろに、冬用は秋ごろに生産販売され、それぞれ売り切れてるため使用者はそれなりにいることがわかります。

このスリーピングバッグ11に関してもしっかり在庫切れするので売れてるわけで、快適性を重視するならイスカのデナリと並んでチェックしたい寝袋。

【-30℃】THERMAREST/ポーラーレンジャー -30℃

画像出典:THERMAREST

金額 103,400円
対応温度 -30℃
製品重量 1474g
ダウンFP 800FP
ダウン量 970g

アウトドア寝具トップブランドの「THERMAREST(サーマレスト)」から2020年に日本上陸した極地冒険者用のモデル。

フロントジッパーでシュノーケルフード(トンネルフード)を採用し、呼気による凍結を防止します。

「そうだよ!極地用って言ったらこういうの求めてんだよ俺らはよぉ!」

って思える寝袋らしい寝袋。

800FPニクワックスダウン(撥水ダウン)を使用し、足元にはTOE-ASISフットウォーマーという断熱ポケットを、ボックスキルトなバッフル間はメッシュボックスバッフルでコールドスポット無くし、マットと寝袋を接続するシナジーリンクコネクターもついています。

一番のポイントが、寝袋の両サイドから腕を出せるという機能性の高さ

極地用の寝袋といっても、機能面ではなく、生地の防水性やダウンの質・量を上げた寝袋が多い中、ポーラーレンジャーは冒険家の意見を取り入れることでより実用性の高い寝袋に仕上がっています。

ぼくが厳冬期用を買うならこれがいいなと思ってます。いや、国内で使うシーンは無いんですけどね?

 

ちょっと脱線する話ですが、日本と本国でやや表記が違います。

日本では「ポーラーレンジャー -30℃」ですが、本国サイトでは「PolarRanger -20F/-30C」となります。

華氏圏内であるアメリカのサーマレストで華氏表記なことによる差です。

ただ正確には華氏-20℉=-28.8℃であり、-30℃は割と雑な表記と言えますが、この保温帯ならそういうものなのでしょう。

一般用途とは言えないモデルなため、受注生産になっています。が、探すとたまに在庫が出てきます。

サーマレスト THERM A REST ポーラーレンジャー -30℃ レギュラーサイズ

【-35℃】AEGISMAX/A1500

画像出典:AEGISMAX

金額 約38,000円
対応温度 コンフォート:-30℃
リミット:-35℃
製品重量 1956g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1500g

イージスマックスの2つ目。

シンプルなマミー型であるGシリーズとは異なり、保温力重視なAシリーズの最上位モデル

フロントジップで、顔元が若干トンネルフードになっており、丸く絞れるのが少し独特です。

ぱっと見が明太子か、エヴァの使徒感にしか見えず安っぽさがぬぐえないわけですが。

ダウン量と重量的にGシリーズよりは保温力の高い形状なことがわかりますが、形状的に出入りなど使い勝手は微妙そう。

フロントジップなら腕が左右から出せるといいなと思ってしまいます。

【-35℃】ISUKA/パフ 1100EX

画像出典:ISUKA

金額 91,300円
対応温度 -35℃
製品重量 1760g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1100g

イスカの最上位モデル「パフ(puff)」

800FPダウンでデナリ1100よりもグレードは上。同じダウン量ながら軽く、暖かくなってます。

現在は型落ちしたのかどこにも在庫が無い状態です。公式サイトも通常はたどり着けませんが直リンクで飛べばページは存在している状態。

表地にはゴアウィンドストッパー(現ゴアインフィニアム)を使い、防水防風性を上げているのも特徴です。

用途も厳冬期国内山岳、ヒマラヤ、極地遠征と大多数の人にとってテレビの中の世界で使われることを想定されているのも夢が広がりますね。

イスカはEN13537非対応ながらも、地球上のあらゆる気象環境を再現できる東レのテクノラマで計測した温度表記なため独自規格の中でも特に厳しい温度表記をしてるのもさすがなところ。→東レ テクノラマG III YouTube動画

今回調べた限り、日本のアウトドアブランドの作る中で最高の保温力を持っている寝袋でもあります。

【-37.8℃】CARINTHIA/D1200x

画像出典:CARINTHIA

金額 1.149€(約141,000円)
対応温度 コンフォート:-27℃
リミット:-37.8℃
エクストリーム:-65℃
製品重量 1900g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1200g

軍事用の防寒着や寝袋などを作っているオーストリアの「CARINTHIA(カリンシア)」

オーストリアの大手寝具メーカーであるGoldeck Textil社がいくつもブランドを展開しており、その一つがカリンシアです。元が寝具メーカーゆえに肌触りが良く、寝心地の良い寝袋を出しているのが特徴です。

またGoldeck Textil社のブランドである化繊中綿素材のG-LOFTも軽量性・通気性・保温性で定評があり、カリンシアの寝袋と言えばG-LOFTというほど。

そのためダウンの印象が薄いですが、極地用にダウンでも寝袋を出していたようです。

表地には独自の防水素材Shelltex、裏地には通気性の高い素材、肌の触れる首元はG-LOFTを充填したネックバッフルを採用しています。

防水素材だからか、外側に縫い目がなくツルっとしたデザインになっているのも今回唯一です。

アマゾンや楽天では「世界No1の冒険家が」のような安っぽい言葉で売られていて残念ですが、化繊の寝袋で言えばスナグパック同様にかなり良いモノだと思います。

【-38℃】AEGISMAX/ULTRA

画像出典:AEGISMAX

金額 約70,000円
対応温度 コンフォート:-30℃
リミット:-38℃
エクストリーム:-63℃
製品重量 1470g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1230g

イージスマックスの最上位モデル。

850FP撥水ダウンを使用し、-38℃対応。

ダウン量に対し、寝袋の重量が驚きの軽さです。

保温力は違えど、今回選出した寝袋の中で一番軽いと言えばそのすごさがわかります。

構造も特殊で、逆L字ジッパーで顔まで完全クローズできる他に類を見ない形状。

ジッパーからの冷気の侵入を防ぐためのドラフトチューブが甘い事や、寝袋自体に防水加工が無い事がデメリットとして存在しますが、それでも値段・重量・保温力がずば抜けています。

 

なかちんさんにレビューも書いていただいてます。ぶっちゃけ欲しい。

【-40℃】FEATHERED FRIENDS/Snow Goose EX -40

画像出典:FEATHERED FRIENDS

金額 959ドル(約100,000円)
対応温度 -40℃
製品重量 1896g
ダウンFP 900FP
ダウン量 1211g

1972年からアメリカ北西部のシアトルでダウン製品を手作りしている「FEATHERED FRIENDS(フェザードフレンズ)」

900FPダウンを使い、軽量でしなやかながら防水通気性のあるパーテックスシールドを表地に使用。

ブランドとして、シンプルで長持ちする品質と最新で革新的な素材を使うことをモットーにしてます。

シンプルな横バッフルのみの形状とパーテックスシールドを使ってるのがそのブランドスタイルなのでしょう。面白みに欠ける部分はありますが、シンプルこその魅力があります。

【-40℃】Marmot/CWM-40°

画像出典:Marmot

金額 819ドル(約84,000円)
対応温度 -40℃
製品重量 2260g
ダウンFP 800FP
ダウン量 ?

オシャレアイテムやコラボアイテム、1000FPダウンなどを扱う「Marmot(マーモット)」

800FPダウン、表地にパーテックスシールド、裏地にパーテックスマイクロライトを使用。

唯一、ダウン量の記載がなかった寝袋です。おそらく1400g前後かと。

上半身が縦バッフル、中間が横バッフル、足元が縦バッフル。

比較的シンプルながら、保温力の高そうな構造になっています。

ドラフトチューブ裏にメッシュポケットがあるのが特殊。

【-40℃】MOUNTAIN HARDWEAR/ファントムゴアテックス -40℃

画像出典:MOUNTAIN HARDWEAR

金額 143,000円
対応温度 -40℃
製品重量 1973g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1307g

コロンビア傘下とは思えない、山の中でもクライミングや極地向きな道具が多い「MOUNTAIN HARD WEAR(マウンテンハードウェア)」

直訳が「山の道具や服」で日本語にするとダサすぎるし、略称であるMHWのモンスターハンターワールド感。

850FP撥水ダウンを使い、表地には防水透湿素材のゴアテックスインフィニアムを採用し、濡れ・蒸れ・風をシャットアウトしてくれます。

テントにも使われる水色と赤の毒々しいカラーリングがたまらなくマウンテンハードウェア。日本受けしない色だなぁと思いますが、8000m級の登山でこれ使ってたら、途端にカッコイイなと思える極地カラーです。

【-40℃】NEMO/CANON -40

画像出典:NEMO EQUIPMENT

金額 101,200円
対応温度 -40℃
製品重量 2000g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1280g

テントやエアマットに定評のある「NEMO(ニーモ)」

2021年に型落ちして公式サイトから姿を消しました。一番魅力的な寝袋なだけに残念。

850FPの撥水ダウンに、テントに触れることで濡れやすい足元には防水透湿性素材を使うのもニーモあるある。

キルティングは縦バッフルで中綿が偏りにくく、体に沿ってダウンが乗り、効果的に保温力を得られます。

フロントジッパーとその横にニーモ独自の温度調整用サーモギル構造を取り入れてます。サーマレスト同様に両脇から手を出せる仕様なのも魅力的。

極地用として工夫されてるなと思うのが、独自のストーブパイプトンネルフード。長くなることで呼気を温め、凍結防止、口元の保温、極限環境下で呼吸をしやすくしています。

-40℃で寝るのをイメージできませんが、寒すぎて呼吸すら厳しい環境に適した機能なのでしょう。

サーマレストのポーラーレンジャーと並び、機能面に魅力を感じる寝袋です。

【-40℃】Rab/Expedition 1400

画像出典:Rab

金額 £840(約114,000円)
対応温度 -40℃
製品重量 2070g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1400g

ウェアや手袋、帽子などが多い印象で、極地用の道具を調べると度々出てくるイギリスのアウトドアブランド「Rab(ラブ)」

850FP撥水ダウン、表地にパーテックスクアンタムプロを採用。

上半身はダウンの移動を防ぐ、縦バッフル。

ダウンウェアを着た状態で入ることを想定し、内側が広くなっています。

色々機能があるようですが、翻訳ではわからないモノが多かったです。残念。

【-40℃】SEA TO SUMMIT/アルパインApIII

SEA TO SUMMIT/ALPINE DOWN WINTER SLEEPING BAG

画像出典:SEA TO SUMMIT

金額 87,890円
対応温度 -40℃
製品重量 1870g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1250g

オーストラリアのアウトドアブランドでメインは寝袋系で、スタッフバッグや調理器具も展開する「SEA TO SUMMIT(シートゥサミット)」

道具選びに悩んでるときに、ふらっと見かけたシートゥサミットの道具が悩みを解決してくれる、そんなことがあるあるな少し他とは印象の違う独立した存在。

軽量性と快適性どちらも犠牲にせずに両立した製品が多い印象があります。

軽量+高品質な寝袋のスパークシリーズの系統を感じさせる上半身縦バッフル、足元横バッフルの構造で、今年から日本の代理店ロストアローの公式サイトに登場した-40℉モデル。誰が使うのっ。

850FP撥水ダウン、表地に防水透湿素材ナノシェル、見るからに分厚いドラフトチューブ、厚着を想定した大きめな寝袋内部。

極めつけが、左ジップモデルながら、右にハーフジップを付け、両手を同時に出せる仕様。同社のアセントシリーズで採用されてるフリーフローハーフジップと言われるシステムです。

ニーモ キャノンやサーマレスト ポーラーレンジャーのようにフロントジップで、両手を出せるとは少し違う独特な両腕スタイル。もしかしてすごい良いのでは?と思えます。

シートゥサミットらしいなと思える他の寝袋とは違う高性能さと独自性が光ってる寝袋で胸躍りますね。

【-40℃】THE NORTH FACE/インフェルノ-40

画像出典:THE NORTH FACE

金額 143,000円
対応温度 -40℃
製品重量 1758g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1249g

タウンユースで着られ過ぎてオシャレアウトドアウェアの代表的な存在の「THE NORTH FACE(ノースフェイス)」

そのせいで、山でノース着てる人はなんちゃってハイカーかゴリゴリの山屋な印象があります。

防水通気素材フューチャーライトなど革新的で独創的なラインナップが多くウェアが多い印象ですが、意外や意外、ノースフェイスの始まりの製品は実は寝袋

フロントジップで、V字幅広で断面が台形になるバッフル構造(トラぺゾイドバッフル構造)は少し特殊ですが、比較的シンプルな寝袋。

しかし、内側に工夫がされており、赤い生地は防水透湿素材を使い、後頭部・肩・腰・踵と荷重のかかりやすいポイントには化繊パッドを内蔵することでダウンつぶれの保温力低下を防いでいます。

ダウンシュラフは背面つぶれるからキルトでいいのでは、とも思いますが、化繊にしちゃうのは一部寝袋でされる実用的なアイディア。

ぱっと見ではわからない工夫がやはり極地用であり、ノースフェイスなんだなとそう思える寝袋です。

【-40℃】valandre/THOR NEO

画像出典:valandre

金額 ?
対応温度 -40℃
製品重量 1871g
ダウンFP 800FP(EU基準)
ダウン量 1240g

1980年からフランスでダウン製品を作っている「valandre(ヴァランドレ)」のTHOR NEO(トール ネオ)。

日本国内で見ることはまずないため、知名度はかなり低め。フランスなどのアウトドアショップでは良くあるらしいです。

本場ヨーロッパ、アルプスなどの山岳地帯で使うことを想定した製品が多め。

シンプルな横バッフルで、旭化成のシェル素材を使用。

翻訳しても珍しい部分もない印象で“ダウンの質と量で殴る”スタイルのパワー属性のようです。

ただ、800FP(EU基準)の表記はあまりみないやつ。

ダウンの質であるFPは検査方法の違いでヨーロッパ(EU)よりアメリカ(US)が高くなるようで、ヴァランドレだと、800FP(EU:ヨーロッパ)の時、850FP(US:アメリカ)程度になり、50FPほど差が出るとのこと。

一部で、800FP(EU),850FP(US)のように表記されています。

【-40℃】WESTERN MOUNTAINEERING/バイソンゴアウィンドストッパー

金額 145,420円
対応温度 -40℃
製品重量 2095g
ダウンFP 850FP
ダウン量 1190g

1970年に2人の登山家が創業。それから半世紀、Made in USAにこだわりダウン製品を作っている「WESTERN MOUNTAINEERING(ウエスタンマウンテニアリング)」

ブラックダイヤモンドやオスプレーを扱うロストアローが代理店ですが、通販でも国内に在庫が少ない様子。超高品質・高価というイメージが強く、実物を見る機会も稀です。

しかし、海外の寝袋ランキングには頻出し、質や満足度の高さは随一の印象。

シンプルな全面横バッフルですが、高品質な850FPダウン・ゴアウィンドストッパー生地を使っています。

両脇にはVブロックサイドバッフルでダウンの片寄りを防止しています。

調べるとクオリティの高さに定評があるようですが、正直よくわからんといったところです。

【-43℃】PAJAK/RADICAL 16H Reg

画像出典:PAJAK

金額 231,000円
対応温度 コンフォート:-31℃
リミット:-43℃
エクストリーム:-73℃
製品重量 1500g
ダウンFP 900FP
ダウン量 1050g

2020年からエバニューが代理店で日本取り扱いの始まったポーランドの「PAJAK(パヤック)」

メインは寝袋で、ウェアやザックなども出しています。

最高品質の900FPポーランド産ホワイトグースダウンを使っているのが最大の特徴で、イージスマックス ウルトラに近い立ち位置で、防水素材などは使わず、軽く・暖かく作っているモデルです。

-43℃で1500gは明らかに軽いと言えるグレード。サイドよりなフロントジップで、見るからに暖かそうな溢れんばかりのモコモコ感。

IR反射層(IRL)というものが入っており、体から出る赤外線熱を反射し50%以上の体温を保持してくれるようです。

ポーランドの会社で世界でも最高品質と言われる現地ポーランドのダウンを使い、超が付くほど高品質ダウンなのでしょう。

まさに“ダウンの質と量で殴る”攻撃タイプの寝袋だと言えるでしょう。

それもあり、今回の寝袋の中で最も高価な23万円という金額。で、ぼくが知りうる限り世界一高価な寝袋です。

次いで高価なのは、高額の代名詞ウエスタンマウンテニアリングのバイソンゴアで14.5万なので、1.5倍以上高価なわけです。

「すごいたかいこうげきたいぷのねぶくろ」

 

このスペックで1500gはめちゃくちゃ軽いになるんですが、どのくらい軽いかを山渓NANGA オーロラ900DXと比べてみると。

メーカー名 PAJAK 山渓×NANGA
製品名 RADICAL 16H Reg オーロラ900DX
重量 1500g 1550g
FP 900FP 760FP
ダウン量 1050g 900g
コンフォート -31℃ -10℃
リミット -43℃ -19℃
エクストリーム -73℃ -37℃
EN13537
目安金額(円) ¥231,000 ¥44,300

ほぼ同じ重量ながらコンフォート-31度と-10度という異次元な差に。

値段は5倍なのでもう別な道具なレベルです。つかってみてえ。

【-45℃】MOUNTAIN EQUIPMENT/Redline

画像出典:MOUNTAIN EQUIPMENT

金額 £800(約108,000円)
対応温度 -45℃
製品重量 1980g
ダウンFP 800FP
ダウン量 1282g

アクシーズクイン取り扱いのイギリスのブランド「MOUNTAIN EQUIPMENT(マウンテンイクィップメント)」

ウェアは見かけますが、ここの寝袋はまだ見たことがありません。

あまり調べることもありませんが、ダウン製品に強いブランドのようです。

国内での取り扱いは一つ下のモデルSNOWLINEまで。

800FP撥水ダウンを使い、上半身が横バッフル、中間が横バッフル、足元が横バッフルと混在した見た目がやや珍しい。

表地にはゴアテックスインフィニアムを採用

もうゴアインフィニアム使ってる寝袋が珍しさを感じなくなってきてますが、極地用だからこその素材なのでしょう。

【-51.1℃】FEATHERED FRIENDS/Snowy Owl EX -60

画像出典:FEATHERED FRIENDS

金額 1139ドル(約117,000円)
対応温度 -51.1℃
製品重量 2273g
ダウンFP 900FP
ダウン量 1501g

さあ、これでラスト!

面白みに欠けるとかいっておきながらもフェザードフレンズを選出したのは、この寝袋を入れたかったためです。

-51.1℃(-60℉)対応で、曰く「The warmest sleeping bag on the planet, the Snowy Owl(地球上で最も暖かい寝袋、スノーウィオウル)

また、「 The only complaint we hear about the Snowy Owl is that “it was too warm”.(スノーウィオウルの欠点は”暖かすぎること”)」のようです。

どう考えても面白いでしょ。

見た目こそ面白くないわけですが、900FPダウンを1500g入れたら、もうそれは鳥気分を味わえるはずですよ。それが11.7万円で買えるなら安いのでは?と思う程度には色々狂ってきてます。

要らないし、必要もないし、それでも一度入って「暖かすぎる」と言ってみたい寝袋です。

【-58℃】PHD/Hispar 1200

出典:PHD

金額
1748ポンド(約30万円)
対応温度 -58℃(-72.4℉)
製品重量 1560g
ダウンFP 1000FP
ダウン量 ?

表にありませんが新しく見つけたので追加。

マウンテンイクィップメント創業者が作る寝袋ウェアブランド「PHD(P.H.Designs=ピーエイチデザイン)」

めったにお目にかかれない1000FPが当たり前に使われてる上に寝袋ウェア共にカスタム可能というハイエンドなブランドです。

寝袋では長さ、幅、表地素材、ジッパーのカスタムが可能で重量値段が変わってきます。

保温力も世界最高ですが、値段も世界最高級で約30万円。わけがわからない。

ちなみに1000FP使用で世界一軽いと思われる200gの全身寝袋も出してました。

調べて気づいたこと

総勢17メーカー21枚のエクスペディションな保温帯の寝袋でした。寝袋の数え方はらしい。

普段調べることもないグレードの寝袋をたくさん調べると気付きもあるわけで、その話。

一覧と平均値

-30℃以下対応の寝袋一覧表

約1.6MB高画質の表で見る

今回ピックアップしたものの一覧表。

温度帯で平均値も出してます。

-40℃対応 9枚の寝袋の平均

・金額:約114,000円

・重量:約1977g

・平均FP:838FP

・平均ダウン量:約1266g

-40℃の寝袋は2kg程度が一般的でダウンは1200~1300g程度なんだなあとわかります。わかると、まあ面白いですよね!

例えば、安価ながら重いデカイな化繊寝袋の冬用。定番と比較してみると

イスカ アルファライト1300EXは-20℃対応で2050g

スナグパック ソフティエリート4は-10℃対応で1950gです。

-10~-20℃程度の冬用化繊寝袋と-40℃のダウン寝袋の重量は同程度とそういうことです。

温度分布と華氏

対応温度の分布は以下。

-30℃(-22℉) 5枚
-35~ -38℃ 4枚
-40℃(-40℉) 9枚
-43~ -51℃ 3枚

-30℃や-40℃という切りのいい数字の数が多いです。

ぶっちゃけEN13537対応も少ないため、微妙な差は切り捨ててその温度にしているのではと思ってます。EN13537対応のAEGISMAX、カリンシア、パヤック、マウンテンイクイップメントが中間の温度帯にあるためおおよそキリのいい数字で作ってる認識で正解でしょう。

また、摂氏(℃)ではなく華氏(℉)表記のメーカーも多いのです。

これはお国柄の特色で、アメリカとイギリスでは華氏、イギリス以外のヨーロッパとアジアでは摂氏が使われます。限定的にシートゥサミットはオーストラリアながら寝袋の温度に華氏を採用しています。

今回出てきたメーカーの国と華氏摂氏の対応表

摂氏
AEGISMAX 中国
CARINTHIA オーストリア
ISUKA 日本
NatureHike 中国
Takemo 日本
valandre フランス
PAJAK ポーランド
華氏
FEATHERED FRIENDS アメリカ
Marmot アメリカ
MOUNTAIN EQUIPMENT イギリス
MOUNTAIN HARDWEAR アメリカ
NEMO アメリカ
Rab イギリス
SEA TO SUMMIT オーストラリア
THE NORTH FACE アメリカ
THERMAREST アメリカ
WESTERN MOUNTAINEERING アメリカ

摂氏-30℃対応の寝袋は、摂氏で見る国が多く、イスカ、タケモ、AEGISMAX、ネイチャーハイクなどでした。サーマレスト ポーラーレンジャーは-20℉(-30℃)とずれがあるため華氏ながら-30℃。

ずれがあってわかりにくい華氏ですが、華氏-40℉=摂氏-40℃と被る位置でありすごくキリが良いです。そのためか華氏を使う国でのみ-40℉(-40℃)の寝袋が出ています。

そう考えると極地用の寝袋は-40℉(-40℃)が世界のスタンダードのように考えられます。

ちなみに、一番暖かいフェザードフレンズのスノーウィオウルは-60℉(-51.1℃)で華氏でキリのいい数字が使われています。

シェル素材

NANGAのオーロラ生地が有名ですが、全体で見れば防水生地を使った寝袋は少数派です。

しかし、極地用の寝袋ではゴアテックスインフィニアムやパーテックスシールドなどの防水透湿性生地を使っているモデルが多く、全21枚中13枚のモデルで防水生地を表地に使用していました。

防水生地にするメリットとして、雪が付いて濡れるのことへの防止はもちろんですが、耐風性という意味で使われているのも多いかなと思います。

8000m級のような極地遠征登山の映像では、爆風でテントがばっさばっさなっているシーンをよく見かけます。

そんなときにより高い防風性を得る意味でも防水透湿性素材はメリットとなるでしょう。

また、ゴアテックスではなく、インフィニアムやパーテックスシールドなのは防水性よりも通気性を重視しているからで、防水防風性を確保しつつも蒸れ対策も必要で、抜けの良いメンブレンを採用しているのでしょう。

そして、防水生地を使ってないメーカーは軽量性を重視していることが多くて、AEGISMAX ULTRAやPAJAK RADICAL 16H Regが顕著です。

撥水ダウン

画像出典:NANGA

防水透湿性生地同様ですが、撥水ダウンも一部ブランドで使われるイメージですが、全体の割合的には少なめです。

撥水ダウンを使っていたのは今回調べた中では21枚中10枚とそれでも少なめ。

「撥水ダウンはコストがかかり高額になるが、メリットは大きい」という印象でしたが、意外とそうでもなく、重要のは低いのかなと思ってしまいます。

どこかのメーカーが言っていた話では、「水鳥の羽毛であるダウンは元より素材自体に撥水性があり、劣化のある撥水加工をするよりも長く撥水性を維持できる。」とのことでした。

パヤックやフェザードフレンズやヴァランドなど特に高品質なダウンを使っているメーカーでは、あえて撥水ダウンにしていないのでは、と思えました。

同じ寝袋で撥水、非撥水ダウンを比べるのはユーザ側の判断では難しいモノですが、撥水ダウン>非撥水ダウンとは言えない気がしています。

バッフル構造

ダウンが寝袋の中を移動するのを防ぐために、バッフル(隔壁)で仕切り、チャンバー(部屋)に閉じ込める必要があります。寝袋の形で、どのように仕切られているかをバッフル構造と言います。

 

画像出典:NEMO EQUIPMENT

ニーモやラブやマーモットは上半身や足元を縦バッフルにすることで、ダウンのズレ防止や体に沿ってダウンが乗ることで保温力を得られるバッフル構造です。

 

画像出典:PAJAK

しかし、全体で見れば21枚中14枚で全身横バッフルの構造を採用しています。

思うに、スリーシーズン用のようにダウン量が少ない寝袋ならば使っていく中でダウンの移動が問題になってきます。極地用ならばどれも1100~1500gほどのダウンが充填されており、隙間ができにくいダウン量です。

そのため極地用で言えば縦バッフル、横バッフルの差は少ほとんど無いのではないかと思うのです。

それでも上半身が縦、中間で横、足元で縦と分けるラブ、マーモット、マウンテンイクィップメントの寝袋は良いバッフル構造なのではと思ってしまいます。

機能性

画像出典:NEMO EQUIPMENT

極地用の寝袋だから、珍しい機能があるんでしょう?と思ってましたが、意外にも普通や普通。

ニーモ キャノンとサーマレスト ポーラーレンジャーがフロントジップで両手を出すジッパーも付いてる程度で、他には特段珍しい機能はありませんでした。

よくよく考えると寝袋に求められる性能は「寝れること」なんですよね。

そのために必要なのはダウン量ヒートロスを抑える構造です。

保温力を上げる最短はダウン量の増加であり、軽く仕上げるためにFPを上げます。

高品質ダウンを大量に入れるという、工夫じゃどうにもならない質を重視した要素であり、シンプルさこそ武器となります。

あとは防水素材や撥水ダウンを使う、ドラフトチューブやネックバッフルを豊富にする程度の工夫で十分であり、それを支える裁縫や製造の精度に依存する製品が寝袋です。

「極限環境下で寝る」ためにはダウン量で力推しするのが最善という根も葉もないことなのでしょう。

寝袋の色

ダウン寝袋を並べる

これだけの数を比較しなければ考えもしない話。

記事を書きながら見てて思ってしまった「あれ、暖色カラー多くない?」と。

暖色→赤やオレンジ系の温かみを感じさせる色のこと

寒色→青系の冷たさを感じさせる色のこと

 

で数えてみると

暖色 10枚(赤は8枚)
暖色を含む 3枚
寒色 4枚
それ以外 4枚

多かった。

約半数が暖色(暖色を含む)であり、赤い寝袋で見ても21枚中8枚とたまたまではありえない多さ。

推測するに、暖色カラーを使うことで視覚的にも暖かく感じやすくしているのではと考えられます。

一番暖かいフェザードフレンズのスノーウィオウルが真っ青なのが「あれー?」ですが、そもそも水色を多用しているブランドでした。

 

画像出典:mont-bell

図の上ほど暖かいモデル

「冬用には暖色カラーが使われる」の目線でモンベルの寝袋一覧を見てみると完全にその通りなグラデーションでした。

#0→EXPだけ変わってますが、アルパインダウンハガーなどEXPが無いモデルでは、#5→3→2→1→0でキレイなグラデーションになります。

結論として、冬用の寝袋は暖色カラーが多いはほぼ間違いないと言えるでしょう。

まとめ

まずお世話になることのない極地用の寝袋。

使わないけれど、役には立たない知識かもしれないけれど、それでも知らないモノを知る欲求には抗えません。知るほど面白い事は無いのです。

世界にはこんな寝袋があるのか、それが知れる良い機会でした。

あわよくば、いつかこの寝袋に身を包む日が来ることを願うばかりです。

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