こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
水面下で度々話題になってきてる中国のテントブランド“ザフリースピリッツ”
中でも最も山岳用途向きな軽量モデルであり、デザイン的にキャンプでも使いやすいハイグレードモデルブルーラベル。
気になってるけど情報も少なく手が出しにくいと思ってる人も多いのではないでしょうか。
使い込んで性格がわかってきたのでレビューすることにしました。
今回はTHE FREE SPIRITSの軽量高品質素材を使用したブルーラベルのPangolinProとGEMINIをレビューしていきます。
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THE FREE SPIRITS/自由之魂
長くテント工場で経験を積んできた中国のテントデザイナー王吉剛(ワンジガン)が、2011年に独立し設立した自由之魂ことTHE FREE SPIRITS(ザフリースピリッツ)。
TFSやTFStentsとも呼ばれてます。
そんなTFSの作るテントの特徴は、
・シワの無い美しい張り姿
・ハイグレードな素材
・用途別のラベル分け
この3つでしょう。
特にその張り姿は一目でわかるほど。
中華テント=安いという色眼鏡で見がちですが、TFSは安かろう悪かろうではなく、世界中の有名テントと比べてもハイエンドなグレードのテントを作っています。
比例して値段もそれなりに高額なわけですが、同グレードのテントと比べれば同程度か少し安いくらいです。
そのため「中国ブランドだからそれなりでしょ?」という固定概念を取り払ってから読み進めることをおすすめします。方向性的には韓国ブランドっぽいなって思ってます。
代理店とアンバサダー
2020年に日本代理店もできました。
その代理店とアンバサダーというかスポンサーというかそんな関係で継続的に支援をして頂ける関係になりました。
いくつかのテントを自由に使わせて頂いてます。
ザフリースピリッツのことと全製品をまとめた記事はそちらから。
ブルーラベル
ザフリースピリッツは用途や素材でグレードが分かれています。
●ブラックラベル-シンプルながらコスパに優れるエントリーモデル
●ブルーラベル-軽量性と居住性を重視し、高品質な生地やポールを採用したライトウェイトモデル
●レッドラベル-厳しい環境を想定し、最高級グレードの素材を使ったハイエンドモデル
軽量性居住性をハイエンドな素材で実現したブルーラベルのテントは3種類。
山岳用では珍しい自然に溶け込むナチュラルカラー。
そして山でも使える軽量性とキャンプでも使いやすい快適性とデザインで今どきで万人受けしそうなグレードのテントです。
15Dシルナイロンのフライ、モノフィラインナー、DAC NFLポールとすでに他ブランドの最上級グレードと同等かそれ以上な素材です。これでさらに上位なレッドラベルがあるっていうんだから高級素材の宝庫です。
同じブルーラベルで性質が似ているため、同列で書きたかったのでPangolin ProとGEMINIをまとめてレビューしていきます。
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Pangolin Pro
PANGOLIN PRO | |
自立 | 自立 |
総重量3s (最小重量3s) |
1280g (1110g) |
総重量4s (最小重量4s) |
1300g (1130g) |
フロア面積 | 2.52㎡ |
前室面積 | 0.81㎡ |
外寸(L×W×H) | 275×140×115cm |
内寸(L×W×H) | 210×(130+110)×108cm |
ポール | DAC NFL Φ8.7mm |
ベンチレーション | 1個 |
フライシート | 15Dナイロンリップストップ Sil/Sil(耐水圧2000mm) |
インナー(3s) | 20Dモノフィラ(通気撥水) |
インナー(4s) | 15Dナイロンリップストップ (通気撥水) |
ボトム | 20Dナイロンリップストップ PUコーティング(耐水圧2000mm) |
ペグ | DAC J-Stake 11本 |
フットプリント (付属品) |
30Dポリエステル 146g |
収納サイズ | 35×10cm |
個人的にザフリースピリッツの中で一番使い勝手が良いパンゴリンプロ。
製品名は動物のアルマジロに由来しています。鱗甲目のセンザンコウ科に分類されますが、センザンコウは英語でPangolinです。パンゴリンプロの美しく張られた丸い姿にアルマジロの丸い背中を見たのでしょう。
入口130cmと足元110cmの2人用サイズでソロ使用なら快適に過ごしやすい、一般的には2人用テントと言われる広さです。
双Yポールの短辺出入口で台形型インナーテントの自立式ダブルウォールと、軽量山岳テントで見かける形状です。
ちなみにエントリーグレードなブラックラベルにあるPangolin2.0の上位モデルという立ち位置です。
実測重量
実測(収納袋) | |
総重量 | 1300g |
最小重量 (フライ+インナー+ポール) |
1119g |
フライシート | 390g |
インナーテント | 460g |
ポール | 269g(10g) |
ペグ | 11g×11本=約121g(5g) |
本体袋 | 45g |
フットプリント | 148g(8g) |
カタログ値は3シーズンインナーで最小重量1110g(総重量1300g)
それに対して最小重量の実測1119gというズレなさに驚きなんですが、実測総重量1300gはカタログ値と完全に同じで嘘みたいな本当の話。まじか。そんなことあるのか。1年くらい使ったあとの実測で重量変わってそうだと思ってたのに。
同グレードのテントと比べるとモンベル ステラリッジ2型1230g(1430g)よりも軽く、ニーモ タニ2P最小1180gよりも軽いというめちゃ軽い自立式ダブルウォール。
設営
上がGEMINI、下がPangolinPro。
本体よりも濃い目な色で横向きのコンプレッションバッグになってます。ポールは別収納。
かなり余裕のあるサイズ感の袋なのでスペックの35×10cmはあまり参考になりません。
ぼくが使うときはフライとインナーを分けて防水スタッフバッグに入れてます。
インナーテントを地面に広げてポールを取り付け。
頭側が高く長め、足元は低く短い双Y型とかダブルYポールと呼ばれるポール構造。
ポール総長を短くできるため軽量テントに採用されることが多い構造です。
ハブが2ヶ所に使われているので一繋ぎのポールになっています。
ポールはDAC社のFeatherlite NFLΦ8.7mmが使われています。
DACの中でも特に軽量なポールで、ニーモやビッグアグネスがよく使ってます。
安いテントに付いてるアルミポールやDAC NSLを使ったことがある人なら持った瞬間に軽いのを実感できるほどの軽さです。
軽量化した分だけ強度は落ちるので4シーズンを想定したNSLよりも弱め、DAC社的には無積雪期を想定しているとのこと。
DACポールが使われるということは周辺パーツもDACパーツになるということ。
グロメット部分は非常に特徴的でした。
ポール末端が球状になってて、その球をカチっとはめ込める構造のグロメットになっています。
しっかり固定されるのでふいに外れる心配がないので通常の差し込むタイプのグロメットよりも設営が簡単です。
ただポールを引っ張るだけでは外れず、パーツをつかんで外す必要があるので撤収はやや手間が増えます。
このグロメットパーツのすごいとこはインナー、フライ、フットプリントを全てフックで取り付けできるところ。
どれもしっかり取り付けられ、簡単には取れないためインナーテントとフットプリントを繋げたまま収納できるメリットがあります。
繋げておけば次からはフットプリントをいちいち取り付けずにまとめて設営できます。
フライ取り付けフックは浅くはめ込む構造ですが負荷が掛かれば勝手に外れることは無く、パーツをつかんでひねるようにすれば簡単に取れてかなり便利です。
グロメットパーツ自体が独立してるので、インナーテントのフックを外すことも可能。
ペグループもグロメットパーツについているので、フライのみの設営やフライ+フットプリントのみの設営もできます。
プラスチックのみで強度的な不安が無くもないのと、ややかさばるのが気になりますがものすごい便利。無積雪期は全部これでいいのではと思うほど。
本体は6点のフックで吊るす吊り下げ式。
他の吊り下げ式に比べてかなり少ない吊り下げポイントの数で設営撤収が速いです。
バスタブは高い位置まで防水生地が使われているので雨への不安もありません。
短辺側にある入口は”C”のような形状。
フライシートをかければ完成です。
フライ素材は15Dの両面シリコンコーティングしたいわゆるシルナイロンです。
すっごいツルツルさらさらで気持ちが良い触り心地。
通常のナイロンに比べて引き裂き強度が高く防水性も高い素材。触ればわかりますがツルツルで滑りやすい素材なため修理や加工がしにくく高価なのが欠点です。
曰く、開いた穴に指を入れて広げようとしても広がらない程度の強度だそうです。
張り縄がある裏に本体とフライを接続するベルクロが付いています。
キレイに張りたい時や張り縄を使う時は付けるべきですが、風が弱いなら付けなくても問題ありません。
フライ長辺部の中央にある張り縄、の裏側にインナーとフライを接続するフックがついています。
フライ側ループに、インナー側フックをひっかけるだけです。
このフックと張り縄を付けることでインナーテント側面を引っ張り上げて居住性をアップさせることできます。
また双Y型の弱い長辺側からの風への抵抗力もあがるので嬉しい仕様です。
この部分ですね。
張り縄ってついつい強く張ってしまいがちですが、この部分はあまり強くひかないほうが良さそう。
そして遠目の位置にペグを刺したほうがキレイに張れます。
前室は2点で固定するタイプ。前室内が台形で広くなります。
写真はGEMINIの前室部ですがパンゴリンプロも同じ作り。
本体に付いたスライドロックは調整がしやすい自在パーツ。縫い付けてループが付けられた白いコードはダイニーマ芯で伸びにくい紐。
以前グレードの違うテントでこの部分を比べましたが、長さ調整ができないモノも多い中ブルーラベルのテントはかなりしっかりした作りでした。
フライにはラベルと製品名タグがついてます。
インナーテント
使ってるのは3シーズンインナー。
3シーズンインナーにはモノフィラ(20D)という素材が使われています。
メッシュと非メッシュインナーの中間位の性質で、通気性・撥水性・耐風性・強度があり、軽量性に優れる素材で触り心地はさらさら。
モノ=1本のことで、モノフィラは1本の糸で織られた生地です。組織が安定し耐摩耗性が高くなります。
撥水性も後付け加工された物ではなく素材の持つ撥水性のため永久的に機能が持続するのも特徴です。
実際に使った感想は、強い風は通る、撥水性はかなり高い、結露は想像よりもしやすい、保温性はあまりない、というメッシュよりはいいけど、非メッシュほど冬に向いた素材では無いと感じました。
モノな素材の隙間が広いことによる風の通りと保温性の低さなようですね。
ただ吹き付けるような吹雪でもなければ寒い時期でも問題はないため、標高の高い厳冬期の山以外では使えます。
悪く言うとどっちつかずで中途半端な性能。良く言えばメッシュと非メッシュのハイブリッドで無積雪期の山ならメッシュよりも風や濡れに強く、保温力と通気性があるためかなり快適。非メッシュより軽く乾きやすい。
あと氷点下環境では保水率が低いためか結露し始めるのが早い印象があります。
結露→凍結の流れはありますが、結露→凍結→解凍してもテント内雨にはなりにくいのがまた不思議です。
結露しやすいのは寒い時期限定の話で夏場ならメッシュ同程度の結露しにくさです。
モノフィラインナーのテントと言えばゼログラムのエルチャルテンが有名どこです。
非メッシュと比べて嬉しいのは適度に透けて外が見えること。
メッシュほどスケスケではなく外の雰囲気が分かる程度でプライベートも適度に守られます。
4シーズンインナーは15Dリップストップナイロンの非メッシュ生地。20g重くなる通気撥水生地とのこと。
写真はMOBIGARDEN LIGHT WINGS DAC UL1の透湿生地ですが、似た感じなのかなと思います。
春夏秋の雪の無い時期は3シーズンモノフィラインナーを、秋の高山や冬山は4シーズン非メッシュインナーを、といった使い分けができるわけです。
日本の山を想定した仕様であり、他ブランドでは見かけない取替え可能なインナーは嬉しいアイディアです。
室内
入口側は130cm、足元は110cmの台形インナー。
マット2枚を並べると足元がぶつかる程度のフロアサイズ。
入口少し奥の最高部は高く108cmありますが、足元は低く荷物を置くか寝る時の足を置く程度の使用に限られます。
入口が大きく開くのも嬉しいとこ。もちろんどちらからでも開けられるダブルファスナー。
双Y型の特徴で上部のポールが1本なので床面積は広くても目線の高さは狭いため、体感は数値以上に狭く感じます。
リッジポールがあれば別ですが、軽量化とのトレードオフですね。
それでも床面積が広いおかげで居住性はそれなり。1人なら問題ないでしょう。
目線が狭いのを画像で表現するとこういうこと。双Y型の一番の欠点。
特にX型に慣れているとスペックではわからない居住性というか、体感の狭さは感じると思います。
実際に荷物を配置するとこんな感じだったり。
こんな感じです。
目線は狭くても床は広いので1人なら荷物を置いても快適な広さです。
天井のランタンを吊るす箇所が座りたい中央ラインにしかないのがちょっと不便。
構造上仕方ないとしか言えませんが頭が当たりやすく、前面を照らせる位置がありません。
紐を通してモノを干すなんて使い方もできません。
入口側左右に小物入れがあります。
写真ではわかりにくいですが、スリットが入ってて荷物を入れた時にハンモックのように広がるようになってます。
スマホ、スタッフバッグ、手袋、サングラス、ヘッドライトなどたくさんいれることができます。しかもそれが左右。
無きゃ無くてもいいなと思う小物入れですが、これだけ大きいとかなり便利。
60cmほど張り出した前室は2点で固定する台形で広め。
あまり高さが無いので煮炊きは向きませんが、クッカーとバーナーを置けるスペースはあります。
キャノピー
フライの入口ジッパーにはスライダーが4つも付いてます。これがかなり便利。
これが閉め切った状態。
左右にスライダーと中間にくっついた2個のスライダーがある状態です。
片側に全部寄せるとフルオープン。
雨耐性はゼロですが、出入りはしやすい状態です。
左右に2個ずつ寄せた状態。
あまりやることが無い不思議な状態。
そしてこれが一番活躍する上部のみ開けられる状態。
外を様子見するのにめちゃくちゃ便利です。
雨の時に止んだかなとか、ガスってるときに収まったかな、という確認をするときはここです。
外から見るとこんな感じ。
寒い時期に開ききらずに外の景色を見ながらご飯を食べる、なんて使い方ができます。
起きた朝に外を様子に見る時もまず開くのがこの形です。
そして一番上に4個揃えて、ポール2本とロープを追加することでキャノピーを作ることもできます。
個人的にこの使い方をすることはありませんが、この張り方に魅力を感じてる人は多いらしいです。
キャンプでタープを省くときなんかにはいいのかもしれないですね。
ジッパーはYKKで噛みやすいわけではないのですが、全面にあるフラップが大きくて外から開ける時に噛みつくことがあります。
慣れれば噛みにくい開け方がありますが、それでもややストレスを感じます。
動きはスムーズなので内側からは非常に開けやすいです。
ベンチレーション
ベンチレーションは足側のフライに1ヶ所のみ。
出来れば入口側にも欲しいですがこの形状だと付けにくそうですよね。
黒く硬い棒状のパーツが入っててベルクロで固定することで開閉できます。
このバーの付け外しでベンチレーション開閉が可能です。
下向きなので雨でも問題はありませんし、メッシュが付いてて虫が入る心配もないのでよほどひどい天気でなければ開けっ放しで問題無し。
開けっ放しで問題がないのでテント内からは開閉できません。
張り縄
張り縄や前室調整部などはダイニーマ芯ロープです。おそらく2mm径。
伸縮性が無いので伸びにくく、切れにくい強いロープです。
金属製の自在はTFSTETSの文字入り。しっかり調整できる自在ですが、好みじゃないので変えるのもアリな部分ですね。
耐風性
測りかねてる部分が耐風性の強さ。
形状的に双Y型はX型に比べて風を受けた時に変形しやすく風に弱いのが欠点です。
という認識で使っているんですが、想像以上に風に強いんですよねこのテント。
シワなく張れてしまうからか、生地がバタつきにくく、風を受け流しやすいのかなと思ってます。
正直夏山なら稜線だろうが問題は起こる気がしません。
それでも双Y型で肉厚が薄く強度の低いDAC NFLなので過度な期待はしないようにしてますが、耐風性で不満が出る人は少ないと思えます。
PANGOLIN PROはこんなテント
パンゴリンプロのパンゴリンプロらしいとこ。
・残雪期まで使える軽量山岳テント
・高い居住性
・美しい張り姿
・主張しないナチュラルカラー
・個性的な入口フライ
・使い分けられる2種類のインナーテント
・フットプリント一体型のDACグロメット
・意外と風に強い
気になるところ
逆に気になるとこ。
・Y型ポールの居住性の低さ
・結露がしやすい
・値段が少し高め
・やや室内目線の広さが狭め
・外側から開くときにファスナーが噛みやすい
・天井吊り下げ位置が悪い
書き出して気付きました。目立った欠点が見当たらないテントです。
あえて書くならというレベルの欠点で細かい不満しか出てきませんでした。
他のテントとPangolin Proを比較
ダブルウォール・自立or半自立・短辺出入口の似たテントをピックアップして比較。
対抗馬はビッグアグネスの新作フライクリークHVUL2EX ソリューションダイと定番山岳テントのモンベル ステラリッジ1型2型と、おまけで長辺出入口のニーモ タニ2P。
パンゴリンプロはインナー2個セットの金額なので高めの表記。
まず驚くのがステラ1型よりも30g軽いということ。それでいてサイズは2人用に近い。
2型と比べると120g(150g)も軽い。
形状的にX型は風に強く、居住性が高くなります(目線の高さの広さ)。
そのため冬張りもあって厳冬期想定したステラとは土俵が違いますが、この居住性でこの軽さなら残雪期~晩秋の雪がちらつく頃までは問題無く使えます。
素材のグレード的には「パンゴリンプロ≧ニーモタニ>BAフライクリーク>ステラリッジ」でしょうか。
国産大手ブランドは少しでも値段を抑えるためか、素材グレードも落とす傾向にあります。そうなったときに作りは良くても素材的な強さ、軽さは一段下なのが実情です。必要不必要はまた別ですが。
比べるとニーモは割高。パンゴリンプロの値段が安めなことに気付きます。
パンゴリンプロよりも30g軽く、比較中で最軽量(1080g)なフライクリークはY字ポールの半自立なことを考えると重量魅力が薄く見えてきます。
考えてみると、パンゴリンプロが最も比べたくなるモデルはステラリッジです。
X型ポールに魅力を感じる、厳冬期テント泊を想定している→ステラリッジ2
少しでも軽く、見た目が好き、個性的なテント、インナーテントの使い分けがしたい→パンゴリンプロ
という住み分けができます。
雪が多く風の強い厳冬期以外ならパンゴリンプロのほうが有利に見えます。
スペック、値段、見た目的に新定番の山岳テントになってきそうです。
つまりは「初めてのテント泊登山」にオススメできるテント、それがパンゴリンプロです。
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GEMINI
GEMINI | |
自立 | 自立 |
総重量3s (最小重量3s) |
1590g (1400g) |
総重量4s (最小重量4s) |
1710g (1530g) |
フロア面積 | 2.86㎡ |
前室面積 | 1.38㎡ |
外寸(L×W×H) | 255×235×112cm |
内寸(L×W×H) | 220×130×105cm |
ポール | DAC NFL Φ8.7mm |
ベンチレーション | 2個 |
フライシート | 15Dナイロンリップストップ Sil/Sil(耐水圧2000mm) |
インナー(3s) | 20Dモノフィラ(通気撥水) |
インナー(4s) | 15Dナイロンリップストップ (通気撥水) |
ボトム | 20Dナイロンリップストップ PUコーティング(耐水圧2000mm) |
ペグ | DAC J-Stake 12本 |
フットプリント (付属品) |
30Dポリエステル 173g |
収納サイズ | 35×10cm |
続いて同じブルーラベルのGEMINI(ジェミニ)。
製品名はふたご座を意味するジェミニのことで、名前の通り2人で使うことを目的としたテントです。
パンゴリンプロを1人用とするなら、ジェミニは2人用というわけです。
同じグレードの生地を使っているため設営方法などが近いテントです。そのために長いけど記事を1つにまとめてます。
インナーサイズ220×130cmで一般的な2人用テントよりもやや大きい目。
Xリッジの長辺前後出入りの自立式ダブルウォールテントです。
パンゴリンプロがブラックラベルの上位モデルなように、ブラックラベルのSTARS2というテントがジェミニと方向性が近く見えますが方向性がまるで違う別モデル。
実測重量
実測(収納袋) | |
総重量 | 1594g |
最小重量 (フライ+インナー+ポール) |
1402g |
フライシート | 457g |
インナーテント | 608g |
ポール | 337g(10g) |
ペグ | 11g×12本=約132g(5g) |
本体袋 | 45g |
フットプリント | 176g(8g) |
カタログ値で1400g(1590g)。
パンゴリンプロと同じく実測とのズレ無さに震えてます。
ブラックラベルはカタログ値よりだいぶ重かったのですがブルーラベルの本気度がはかり知れませんね。
設営
スタッフバッグはパンゴリンプロと同じで全然区別付きません。ただそれぞれ名前の書いてあるタグがついてます。
ジェミニもDAC Featherlite NFLΦ8.7mmが使われています。
細部もパンゴリンプロ同様でフックの吊り下げ式、球状のポール末端、フライインナーフットプリントを一体設営できるグロメットパーツが使わています。
ジェミニはフックを14ヶ所で吊り下げ。
プラフックは厚手のグローブを履いた状態でも付けられます。
グローブを脱がずに設営できるのは4シーズン用途なら大事なポイント。
左がパンゴリンプロ、右がジェミニのポール。
Y字ハブを2つ使ったパンゴリンプロはどうしても嵩張ってしまいますが、ハブ無しでX型にしているジェミニはポール総長は長くてもコンパクトに収納できます。その代わりリッジポールも含めてポールが3本です。
ハブが無いのでジェミニは4辺にポールを差し込んでも自立せず、吊り下げて初めて自立します。そのため設営はジェミニのほうがわずかに手間。
大きな違いはサブリッジポールがあること。
X型に張ったポールの上に乗っかるように取り付けます。
ポール末端は透明の受け口でカチっとハマります。
さらにフライ内側の黒いパーツにはめ込んで完成です。
フライを取り付けたら完成。
張り縄の内側のベルクロは4ヶ所、リッジポールの内側固定がパンゴリンプロより手間が増える部分。
インナーテント
側面。
リッジポールを使うテントのメリットは側面を垂直にして床面積を変えずに上部を広くして居住性を上げることだと思います。
が、ジェミニはリッジポール部分まで生地を配置してないんですよね。インナーテントの生地パターンを変えれば多少重くなってももっと居住性を上げられると思うんですがどうなんでしょう。
これリッジポールのおかげで張り姿がかなりキレイになるんですよ。それ狙いなのかなとか考えちゃいます。
前後にある広く開くD型ジッパーをどちらも開くとこの解放感。
天気の良い、虫が気にならない時期なら全開がサイコーに気持ち良いです。
モノフィラインナーは適度に透けてますし、カンガルースタイルとの相性もとても良さそうです。
室内
130cm幅だとマット2枚並べてもまだ余裕があります。
長辺が220cmあるのも居住性を求めたブルーラベルなのがわかる余裕のある長さ。
側面がそれなりに立ち上がっているので目線が高いのも居住性を語るうえで欠かせません。
床面積ばかり見てしまいがちですが、目線の高さが広いと体感で広く感じるらしいです。
正直ソロなら広すぎて持て余す広さです。
ソロ泊っぽく荷物を並べてみると。
荷物多めの登山(70Lザックとか)、ソロキャンプでも十分余裕のある広さです。
にしてもソロなら広すぎる広さ。1人で使うなら荷物の増えやすいキャンプ用ですね。
広いといくらでも寛げてしまいます。
寝転がって天井部。
フライとインナーの透けっぷりがわかります。テント内が明るいのは気持ちも明るくなりそう。ただ真夏だと遮光性が低い欠点はあります。
頭上の広さよりも通気性を重視しているような気がします。
リッジポールのおかげでかなり風通りが良さそうな隙間の広さです。
ベンチレーションは開閉できる大きなものが2つ付いています。
小物入れが4辺に4つも付いているのは驚きました。
2人で使っても2つずつ使えるわけですからね。見れば見るほどソロでは無く、2人で使うことを想定したテントだとわからされます。
誰か一緒に使ってくれ。
前室
前室は三角形で奥行き約60cm、幅はテントと同じ220cmの広さです。
フライにジッパーフラップがあるのでベンチレーションが無い側を開けて使いがちですが、どちらをあけるのにも対応しています。
パンゴリンプロ同様少し癖をつかむまでジッパーがフラップに噛みつきます。そして内側から開けるのはスムーズ。
もちろんフライ左右両開きも可能。
固定はシンプルなトグル式。
前室一つの面積はパンゴリンプロよりも狭いですが、長辺出入口なので高さがあってバーナーを使ったり、バックパックを置くのはジェミニのほうがしやすいです。
その前室が前後にあるため、2人でテントを使った時により良さを感じるはずです。
ソロなら片側は全く使いませんもんね。
最大の欠点はフライシートがダブルファスナーじゃないこと。
フライを上からは開けられず、下からしか開けられないということです
これは本当にもったいないと思う。悪天候時にぱっと外の天気を見る時のストレス度が全然違います。
パンゴリンプロが4スライダーで上だけ開けられるのと比べると、本当に「もったいない」という感情になってしまいます。
GEMINIはこんなテント
ジェミニの特徴。
・居住性の高い軽量テント
・2人で泊まれる広さと快適性
・美しい張り姿
・主張しないナチュラルカラー
・カンガルースタイルがしやすいインナーテント
・使い分けられる2種類のインナーテント
・フットプリント一体型のDACグロメット
気になるところ
・ダブルファスナーじゃない
・ソロには広すぎる
・ポールにハブが無い
・外側から開くときにファスナーが噛みやすい
・値段が少し高め
ジェミニの居住性と機能性を活かす場面は2人で泊まった時だと思います。
そのためソロぼっちなぼくにはジェミニの本来の魅力を出しきることができなかったように思います。広すぎて孤独感すらありましたもんね。
そしてあえてハブ無しにしてると思いますが、吊り下げ式ならリッジポールまでハブつけてしまっても良かったんじゃないかと思っちゃいました。ポールが3本に分かれるのはやはりちょっと手間でした。
他のテントとGEMINIを比較
画像クリックで高画質版です。
ジェミニは比較数が多かったので画像の表。
ダブルウォール・自立式・長辺出入口・リッジポール付き(カミナドームだけ無し)でピックアップ。
ビッグアグネスやニーモが強い土俵です。方向性的にカミナドームはちょっと路線が違うテント。
コッパースプールとテロス TR2は足元が狭い台形インナーなので広さ、快適性は一段下。
中でも一番近いスペックなのはニーモ ダガーストーム2P。
スペックで見るとジェミニがやや安く軽量。インナーテントを選べるのも長所。
フロア面積はジェミニ(2.86㎡)とダガーストーム2P(2.9㎡)と僅差ながら、長辺が9cm長いダガーストームのほうが快適性は高くなりそう。
ポール構造がXリッジな分ジェミニのほうが耐風性は高そうですが、ダガーストームはDAC NSLなので差はほぼ無さそう。長いリッジポールと曲がったY字ポールで居住性を広げてるのと前室が台形なのも良いとこ。
生地やポールグレードも近く、比べるほどに性質の近いテントです。
ぶっちゃけどっちを買っても失敗と言うことはないはず。
値段と見た目の好みで選んでいいと思います。カップルや夫婦ならよく相談しましょう。
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Pangolin ProとGEMINI
同じような素材で、似た性質なPangolin ProとGEMINI。
この二つで悩むことはまずないでしょう。
パンゴリンプロは、ソロでのテント泊登山や軽量キャンプやツーリングに向いたテントです。
1人で使うことが前提で軽量性と居住性を重視した時に選ぶテントです。
「初めてのテント泊登山用テント」なら候補に入れておいていいでしょう。
ジェミニは、登山やキャンプで2人で使うときに選びたいテントです。
もちろん快適に過ごしたいソロで使ってもいいですが、ソロ登山で選ぶには大きすぎて人気のテン場ではスペースに悩むことも多そう。
ソロならキャンプ向きですね。
2人で使う可能性がある人がソロで使うこともある、ならアリですがソロ登山用に買うならパンゴリンプロのほうが満足度が高いはずです。
ソロかデュオか、というのがこの二つのテントの住み分けですね。
使用シチュエーション
どちらも用途的は確実に山岳用と言えます。軽さ・強さ・インナーテントからです。
夏なら平地から北アルプスの稜線上に張るようなテン場でも活躍してくれるでしょう。
保温力的には4シーズンインナーが用意されているため冬も視野に入れることができます。
公式ページでは10~25℃程度では軽量な3シーズンインナーをオススメしてました。それ以下の気温下では保温力の高い4シーズンインナーというわけです。
そんな4シーズンインナーが活躍するのは山では晩秋の高山(10~11月)や残雪期の高山(4~5月)。
4シーズンと言えど、爆風+積雪のある12~2月に標高の高い山は出来れば避けたいテントだと思います。
無風晴天なら真冬でも問題ありませんが爆風やドカ雪に当たるとテントが潰れるリスクが十分ありますし、そもそもその用途は想定されていないことはDAC NFLポールを使っていることからわかります。
そのため厳冬期以外のテント泊登山で使えるテントという感じですね。どちらも。
もちろん平地なら冬も含めた4シーズン使い続けられるテントです。
ジェミニは降雪にも強めですが、パンゴリンプロはベンチレーション位置が低いので降雪時はやや怖いかな、と思います。
在庫状況
2021.12月 現在在庫がまだ不安定です。
Pangolin Proは3s4sインナーテント2つセットのみの販売で公式とグリップスに在庫有。
GEMINIは現在のところ入荷予定が未定とのことです。
しっかりと動いているようなので首を長くして入荷を待ちましょう。
ブルーラベルが美しく張れる理由
美しいとも言われるザフリースピリッツ。
今回のブルーラベルがシワなく張りやすい理由は何となく推測できてます。
・良く伸びるシルナイロン
・ややきつめの調整域
ズバリこの二つです。
フライシートに使われているシルナイロンが良く伸びるため、ペグや張り縄で引っ張った時にシワができにくいだろうというのが第一。
第二はフライシートの張り縄やインナーテントと接続するベルトの調整が他のテント比でかなりきつめまで調整できる気がします。パンゴリンプロのサイドの張り縄もそれです。
結果、美しく張りやすいのではないかとぼくは思いながら使っています。
フィールドフォト
実際にフィールドで使ってる写真です。こんな感じになる、の参考になればと思います。
まとめ
2つ分をまとめてしまったのでだいぶ長くなってしまいました。
今後山のテン場やキャンプ場で見る機会も増えてくるだろうザフリースピリッツのテント。
軽さと強さとデザインのバランスのちょうどいいブルーラベルは要チェックですよ。
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コメント
あいかわらずわかりやすい記事ありがとうございます。
新しいテントはほとんど知らないので読んでいても楽しいです。
このテントのグロメットパーツとサブリッジポール末端のパーツは
愛用のマウンテンダックス/ヌプカと同じです。
違うのはXポールとサブリッジポールの固定パーツくらいです。
ヌプカを買ったときは樹脂が硬質な感じ(とくにサブリッジの透明パーツが)で厳冬期に割れないか心配で
予備パーツを探したのですが見当たらず。
いまならDACから直接入手してリペアも可能そうですね。
ORION様
長めな記事でしたがありがとうございます!
マウンテンダックス ヌプカ知りませんでした!良さそうなテントです。
ニーモなんかでも見かけるパーツですが、割と前から使われているんですね。
プラパーツは冬の破損が怖いですよね。
実際どの程度の強度かわかりませんが、長く使われていてひどいトラブルも聞かないのでそれなりの強度はあるのかなと思えます。
パーツ取り寄せか、修理としての対応になりそうですねえ。