こんにちわ、ぜつえん(@zetuenonly)です!
そのスタイリッシュな見た目からお店で見るたびに興味を惹かれるバーナー“ジェットボイル”
高級湯沸かし器と侮蔑的に言われながらも、最速の湯沸かし器という最高水準の性能を持った道具でもあります。
そして同じジェットボイルでも種類が豊富でそれぞれ特徴は異なってきます。
今回はジェットボイルの特徴と性能、現行5種類の比較と選び方を紹介していきます。
ジェットボイルとは
ジェットボイル(JetBoil)は2001年にアメリカのニューハンプシャー州で設立、2003年に製品デビュー、2012年に買収されています。日本の代理店はモンベル。
フラックスリング
風の噂でジェットボイルがすごい!と聞くことは多いです。
でもなにがすごいのさ?と言われるとその完成された構造と燃焼効率の高さでしょう。
バーナー部とクッカー部が連結した一体型構造になっていて、フラックスリング(ヒートエクスチェンジャー:熱交換器)と呼ばれるクッカー底に一体化した蛇腹の部分が熱を外に逃がさず、また保持することで無駄なく効率的に加熱できる仕組みになっています。
そのため一般的なシングルバーナーに比べかなり低い火力(1100~1500kcal/h程度)でも早くお湯を沸かすことができます。低火力なのと同時にガス消費量も減るため少ないガス消費で多くのお湯を早く沸かすことができて経済的でもあります。
この一体型の仕組みはパーソナルクッキングシステム(PCS)とも呼ばれています。過去に発売されたジェットボイルの製品にはその名称を使った「PCS FLASH」というバーナーもありました。
ネオプレンコジー
本体はネオプレン(クロロプレンゴムともいう)という耐熱性に優れたウェットスーツにも使われる素材で覆われています。この断熱カバーはコジーと呼ばれます。
断熱力が高いため中のお湯が沸いた状態でもネオプレンコジー越しに本体をつかむことができます。
そのため鍋の取っ手がありません。その代わり写真では黒い部分が手を通せるバンドになっているため取っ手よりも重さを感じずにクッカーを持つことができます。これはとって(取っ手)も便利です。
一般的なバーナー+クッカーの場合は外に熱が逃げるためコジーは溶けてしまい使うことができません。一体型+フラックスリングを使ったジェットボイルならではの工夫といえます。
オールインワン設計
ジェットボイルには多くの付属品がついてきます。
専用クッカー以外で調理するゴトク。
フラックスリングの保護、保温調理、計量カップやコップになるカップ。
燃焼用バーナー。
110缶にも250缶にも使えるスタビライザー。
樹脂素材で湯切り、注ぎ口のついたフタ。
それら全てをクッカーの中に収納できるオールインワン設計になっているのもジェットボイルの優秀なところです。
どのモデルでも全部入りますが、ジップとマイクロモはピッタリ収納。フラッシュとミニモは少し余裕ができる。スモーはかなり余裕ができます。
メスティンに色々詰めてシンデレラフィットを探すのも楽しいですが、ジェットボイルは最初から収納まで考えられた完成された製品です。どちらがいいかとは言えませんが。
サーモレギュレーター
サーモレギュレーターは低温環境や長時間使用時でも安定してガスを出力し火力を維持する機能です。
SOTOならマイクロレギュレーターと呼ばれますが、大体同じものです。
メーカーとしてはマイナス6度でも安定した火力とうたっています。
ただこのサーモレギュレーターは個人的な話、ジェットボイルに対して言えばあっても無くてもあまり変わらないと思っています。
ジェットボイルの特性から沸騰が早いため長時間ガスを使用するドロップダウンが起こることはあまりありません。
そして低温化、特に冬山等のシチュエーションではマイナス6度どころではないのでサーモレギュレーターがあっても火力が落ちてしまいます。そのためぼくはサーモレギュレーターのついていないジェットボイルフラッシュを使用前に懐などで温めてから短時間でお湯を沸かしきる使い方をしています。
無くてもそこまで困りはしませんが、あるに越したことがないのも事実なサーモレギュレーターです。
ジェットボイルの比較
ここまでは全ジェットボイル共通の性能。
ここからはさらに個別の製品ごとの特長を紹介。
比較表
フラッシュ | ジップ | マイクロモ | ミニモ | スモー | |
重量(ゴトク35g込) | 440g | 400g | 400g | 500g | 550g |
容量 | 1000ml | 1000ml | 800ml | 1000ml | 1800ml |
サイズ(収納時) | Φ10.4x18cm | Φ10.4×16.5cm | Φ10.4×16.5cm | Φ12.7×15.2cm | Φ12.5x21cm |
沸騰到達時間(0.5L) | 100秒 | 150秒 | 140秒 | 140秒 | 228秒(1L時) |
出力 | 2269kcal/h | 1134kcal/h | 1404kcal/h | 1404kcal/h | 1404kcal/h |
ガス消費量 | 139g/h | 65g/h | 120g/h | 120g/h | 120g/h |
サーモレギュレーター | 無し | 無し | 有り | 有り | 有り |
金額(+税) | 14800円 | 10500円 | 18500円 | 19500円 | 20500円 |
特徴 | 高火力 | 最安 着火装置無し |
レギュレーター | レギュレーター 広口浅型 |
大容量 |
この表を参考にそれぞれの説明をしていきます。
フラッシュ
ぼくが使っているのがこれ。
2018年にPCSフラッシュ→フラッシュにモデルチェンジした製品。
その名の通りフラッシュ、大げさですが光のような速さでお湯を沸かすことが可能な高火力モデルです。
カタログスペックでは500mlの水を100秒(1分40秒)で沸かすことができます。
ジェットボイルの中で最高火力の2269kcal/hですが、一般的なシングルバーナーに比べると控えめな火力です。SOTOウィンドマスターは2800kcal/h、プリムスP-153は3600kcal/hです。 他のジェットボイルに比べるとかなり高火力、それとフラックスリングが合わさるとフラッシュな速度の湯沸かし器になります。
フラッシュのみの特徴がもう一つ、ネオプレンコジーに温度インジケーターがついてること。
中のお湯の温度が上昇すると写真正面の反射した部分がオレンジになります。体感では沸騰前の60~70度でオレンジになってきます。
お湯を沸かすということを考えればフラッシュが全モデル最速最強のお湯沸かし器でジェットボイルが欲しい万人にオススメです。
サーモレギュレータは付いてませんが、持ち前の高火力のおかげで冬山でも困ることもほとんどありません。マイナス10度以下の日に一晩前室おいておくと朝は全くつかないですが、それはサーモレギュレータ有でも変わらないとこです。
そしてサイズが1Lと少し大きめなのもソロならデメリットポイントになり得ます。逆にデュオでは便利です。そこは使用者次第です。
レビュー記事
ジップ

ジップ(ZIP)はジェットボイルの中で一番シンプルなモデルです。名前のZIPは急ぐ、早く進む、という意味がありジェットボイルらしい製品名です。
ジップで覚えるべきは最安・着火装置無し・それゆえに最低限の機能の3つです。
順番に説明していきます。
まずは最安。
定価が10500円+税とジェットボイルの中で一番安く買えるのがこのジップ。
安いから性能低いのでしょう?ということはあまりなく、火力が1134kcal/hと一番低いですが、フラックスリングや構造はそのままなので500mlの水を150秒(2分半)で沸かすことができます。
そして着火装置がついていないこと。
ポジティブに考えれば軽量化されている、安いための削減、どうせ低温化では使えないモノと考えられます。
ネガティブに考えるとライターが必要、手間、無くてもいいけどできれば欲しいと考えます。
ただぼくの結論としてはシングルバーナーの着火装置不具合率は圧倒的に高いため必ずライターは持っていくです。なのでまあ、安いならなくてもいっかな、がジップに対する考えです。
さらに言うとジェットボイルの場合はオールインワンで収納して+ライターも入れれますし、底のカップとフラックスリングの間にライターを仕込むこともできます。
最低限の機能。
低温化でも火力を維持するためのサーモレギュレータがついていないこと。
満水容量が800ml(調理可能は500ml)と一人分のカップ麺+コーヒー分程度であること。
着火装置がついていないこと。
火力調整つまみが小型。
ゆえに安価。
着火装置がなく、サーモレギュレータもなく、容量は一人分、それで安い。
しかしジェットボイルなので沸騰は早いという最低限、シンプル、そんな言葉が似あうのがジップです。
とりあえずジェットボイルを使ってみたい方、ほかのバーナーを持ってるけど雰囲気の違うバーナーも使ってみたい方、サーモレギュレータがないので夏限定で標高の高いところはあまりいかない方。
そんな気軽に使いたい方にオススメなのがジップ。
マイクロモ

冬の山岳用定番がマイクロモ。
クッカーはジップと同じで満水800mlの小型サイズ。重量も同じ400g。
ジップにサーモレギュレータと着火装置がついて火力調整つまみが大きく操作しやすくなったのがこのマイクロモ。
そのため低温化や長時間使用時(ドロップダウン)に火力が落ちにくく安定してお湯を沸かすことができます。
ソロ登山用でジップよりも良いモノと考えた場合に、マイクロモとフラッシュで比較される場合が多いです。
一番の違いはやはりサーモレギュレータ。
冬で、特に雪の積もるような冬山登山、冬キャンプといった環境下で使用することを考えればマイクロモ>フラッシュ。
またフラッシュの1000ml(1L)という容量が大きくパッキングの邪魔になるなと思う方は800ml(0.8L)のマイクロモがオススメです。
ミニモ

見た目からもわかる通り浅く太くずんぐりむっくりの変わった見た目なのがミニモ。
性能的にはマイクロモと同じでサーモレギュレータ、着火装置、大きな火力調整つまみが付いて形状のみ変わったモデルです。容量は1000ml(1L)とフラッシュと同じでマイクロモより大きめ。
ミニモ以外すべてのジェットボイルに言えることですが、縦長(深型)クッカーと言われる収納性を重視した形をしています。パッキングはしやすく持ち運びは便利ですが口が狭く長いため調理や食事に向いていないデメリットがあります。

出典:mont-bell
それに比べミニモは広口浅型と言われる形で、文字通り大きく開いた口は調理がしやすく、食事もしやすい構造です。
フォークで食べる場合など底の食材の取りやすさは段違いです。
さらに食後にクッカーをウェットティッシュでふき取る時も浅く広い構造は楽にキレイにすることができます。
その構造からミニモはお湯沸かし特化よりも調理や食事を楽しみたい方が使いやすいジェットボイルです。
キャンプで使いたい方や山頂で少し凝った料理を使いたい方はミニモがオススメです。
スモー

1.8Lと大容量のスモー。1Lの水を255秒(4分15秒)で沸かすことが可能。
性能はマイクロモと全く同じで、サーモレギュレータ、着火装置、大きな火力調整つまみはそのままに大きくなったマイクロモです。おっきくなっちゃった。
多人数用のお湯を一気に沸かす用途に向いたモデルで、昨今のアウトドアでは各々が別々に調理し食事する個食傾向にあるためあまり使われないモデルです。
用途的には、3~5人の家族で一度にお湯を沸かしたいシーン。アウトドアガイドでツアー客にコーヒーを出すシーンなどでは大活躍してくれるでしょう。
あとはスモーを購入後、ジップのクッカー単体(8000円ほど)をあとから購入し使い分けるなんてことも可能です。
しかし万人向けモデルでないのは事実ですね。
ジェットボイルの選び方
それぞれの特徴を知ったら選び方紹介。
基本的には用途で選ぶのが間違いないです。
ジェットボイルチャート
全体を比べて選ぶときのポイントは3つ
・冬に使うかどうか
・800mlか、1000mlか
・調理はするか
冬に使うならレギュレーター付きのミニモかマイクロモ、高火力なフラッシュの3択。ジップも必要十分ですが冬想定であえて選ぶ必要性は感じられません。
その中で1000mlは必要なく、軽量性コンパクト性重視で800ml(実用量500ml程度)で良いならマイクロモ、もしくはジップ。
調理をするならミニモ一択。大人数で1L以上の水を沸かすならスモー一択です。
それぞれの特性と用途を理解すると選び方は難しくありません。
あえて言うなら冬にソロで使う場合にマイクロモかフラッシュかが一番難しい選択。これはもう800mlか1000mlかで選んで問題はないと思います。
さらに用途別に細かく紹介。
冬山・冬キャンで使いたいマン!
寒い時期を想定するならサーモレギュレータ付きのマイクロモ(800ml400g)かミニモ(1000ml500g)がまず選択肢になります。さらに高火力で低温化でもお湯を沸かしきる性能のフラッシュ(1000ml440g)も候補に入れていいでしょう。
その中で凝った調理もしたい、縦長クッカーは嫌だ食べやすいクッカーがいい人はミニモ。
少しでもパッキング性能が高く小さく軽量ほうがいい人はマイクロモ。
多少大きくてもいい、1000mlくらいのサイズは必要、少しでも沸騰が早いほうがいい人はフラッシュ。となります。
早くお湯を沸かしたいんだオレは!
せっかちさんは業界最速の沸騰速度を持つフラッシュ一択でしょう。
「なに?もう沸いているだと?」と閃光のフラッシュごっこができるのもメリットだったりします。
料理を楽しみたいのワタシ!
個人的にジェットボイルは調理に向いたバーナーではなく、正直インスタント麺茹でるのが限界な道具だと思ってます。なので湯沸かし器と呼んでます。
変に調理をするなら別のバーナーを持つほうがクッカーの幅も広がりますし、有意義だと思います。
でもジェットボイルで調理をするならミニモしかないでしょう。
調理がしやすいよりも広口浅型で食べやすく、ふき取りやすいほうが大きなメリットに思います。
ジェットボイル用の料理本、そんなことできるのかーというボイルや保温調理方法が載ってます。ミニモでこそ読みたい本。
安いと嬉しいなぁボクは。
着火装置なんていらないよね、サーモレギュレータもまあなくてもいいよね、でもお金もないんだ。
そんなあなたはジップがオススメ。
良くも悪くも必要最低限。何も問題はないのがジップ。冬に使うなら少し火力不足が痛いかな程度。
冬も使うかもしれないなぁ?なら5000円追加してフラッシュにしよう。
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ジェットボイル一覧
オプションアイテム
ジェットボイルとセットで欲しい周辺パーツも紹介。
ガスカートリッジ&ジェットゲージ
ジェットボイル購入時に必ず一緒に買わなければいけないのがガスカートリッジ。いわゆるOD缶。
110サイズと250サイズの2つがあります。ジェットボイルでは内容量100gと230gで記載されています。110缶は蓋なしで200gジャスト、250缶で蓋なし355gです。
他メーカーだと500サイズもありますが、ジェットボイルにはありません。
110缶はジェットボイル内に収納可能、250缶は収納不可です。
ガス缶に入る内容物はノルマルブタン、イソブタン、プロパンの3つでその配合比率によってガス缶の寒さ耐性がわかります。
沸点 | |
ノルマルブタン | -0.5℃ |
イソブタン | -11.7℃ |
プロパン | -42.1℃ |
プロパンが多いほど寒さに強くノルマルブタンが多いほど温暖な気候向きのガスカートリッジとなります。
ジェットボイルの内容比率は公開されてませんが、イソブタン80%、プロパン20%のようです。かなり寒冷地向きのガス缶と言えるでしょう。
細かい各社OD缶比較は別記事で
コーヒープレス
ジェットボイル専用のコーヒープレス機です。
使用方法はお湯を沸かす→コーヒー豆を入れる→プレスしてコーヒーをカップに注ぐ、の3ステップ。
使用後に中にこびりついた豆を出すのが手間で使用頻度少な目ですが面白い道具です。
ハイキングやキャンプで友人にコーヒーを振る舞う時に盛り上がる便利なアイテムです。
ハンギングキット
バーナーとクッカー一体型だからこそできるハンギング(吊るす)キットです。
ぼくはロープで自作しましたが、純正品だとバーナー側を固定して吊るしたままクッカーのみ外すことが可能です。ただ少しお高い。
ハンモックではリッジラインに吊るして使うことができますし、テント内でも吊るして使うことで転倒のリスクを避けることができる優れものです。
ジェットボイル類似品
ヒートエクスチェンジャー付き一体型という類似品。
MSR ウインドバーナー

画像出典:MSR
2020年日本上陸。ジェットボイル同様にヒートエクスチェンジャー付きクッカー一体型バーナー。
重量465g、火力1765kcal/h、1Lカップ(ハードアナダイズド加工ド加工加工工)、レギュレーター内蔵。
ジェットボイルとの一番の違いは個人的3つ。ラジエントバーナー機構・耐風性の高さ・接続ポイントの多さです。
最大のポイントは100%一次空気のみで燃焼するラジエントバーナー、炎がでない輻射熱で加熱し、完全に密閉した構造にすることができるため耐風性の高い作りにできています。
その結果耐風性が高くなっています。
ジェットボイルは強風時にそのまま使うと火が消えてしまうこともあり、多少の風でも沸きは格段に遅くなります。
テントの前室で使うなら変わりませんが、山頂でご飯となると差が出てくるポイントです。
そして個人的に良い点がクッカーとバーナーの接続ポイントが12カ所ありどの向きでも接続できるとこ。ジェットボイルは2ヶ所で表裏のどちらかでしか接続ができないので鍋の掴む位置、注ぐ位置、点火装置、火力調整つまみが好みの位置に来ないことが多々あります。
MSRらしい赤いスタイリッシュな見た目も好きです。
まとめ
お湯を沸かすならジェットボイルが最強です。
特に冬や山ではその有用性は大きくなります。
よくあるジェットボイルの間違った探し方をしている人をみます。調理にこだわろうとする人です。
ジェットボイルを購入を考えるなら“お湯を沸かす”に特化し、お湯を使って作れる食べ物にするのが賢いと思います。
ジェットボイルを自分に合わせるのではなく、自分をジェットボイルに合わせるという考え方です。調理がしたいなら他のバーナーを買うのがはるかに便利です。



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